ずっと貸していた絵の具箱が返ってきた。 僕はあげたつもりだから返さなくていいと言った。
でもその子はどうしても、と絵の具箱を置いて去った。 そのきっぱりした様子で、彼女が何を考えたかわかった。
貸したものが返ってくると寂しい気分になる。
僕たちは死ぬまでにたくさんのものと決別する。
雨の中、制服姿のムロイが濡れながらも何かを握りしめている。彼女の表情は切なく憂鬱で、その視線はどこか遠くを見つめている。雨に打たれながらも強く立つ姿に、決別や喪失の感情がにじみ出ている。ムロイが抱える内面の複雑な思いが、陰影の強いモノクロの描写によって一層深まっている。
