恋愛関係における不穏な空気のことを「不協和音」と言ったりしますが、 わたくしはあんまりその言葉を使わないです。
実際の不協和音は誰が聞いてもはっきり理解できる不愉快な響きの音の組み合わせですが、 人間関係の最初の不穏は、ほとんど無視できる、 無視していいと思ってしまうほどの小さな小さなほころびだからです。
セリフ
1ページ目
- 「えっ、それS先生に言っちゃったの?」
- 「なんかだめだった?」
- 「いや、うーんあの人嫉妬すんのよね私に。」
- 「対策打っとくか。先に。」
- 「色々あんのよ女同士って。」
- 「そういうのなーんも関係ないとこでお気楽に生きてるから君が好きなんだけどさ。」
- その小さなシグナルに僕は全く気付けない。
2ページ目
- 「ねえ 知ってる?」
- 「好きでいられる 時間ってほんと 短いんだよ。」
- 君はこのシグナルが何から発生しているか、気づくことができますか。
村木がピアノ教室の先生に対して何らかの不安と不穏を感じて信じていない。僕のその鈍さが好きなんだと言葉で言いながら、恋人である僕に小さなシグナルを送っている。しかし、そのシグナルに僕は気づいていない。村木は好きでいられる時間が短いことを僕に伝え、その警鐘を鳴らしている。

