僕がまず不可解だったのは村木のこういう言い回しで、 べたべたすることが「甘えている」だと映画や小説で理解していた僕は、 最初何を言っているのかよくわからなかった。
言葉にすれば簡単なことで、 面倒を避けるためだけに愛想をふりまいて生きている人間にとって、 一番の甘えはそれをしなくていい時だというだけだ。
僕はもともと愛想のない人間だったから、 普段から素でいればいいんじゃないのと軽く言ってしまったのだけれど、 それは彼女を大きく傷つける結果となった。
人間関係は、人間関係以外からは学べない。 これは僕の始まったばかりの大学生活の、その第一歩でもある。
セリフ
1ページ目
- 不可解。
- 「ちがう。」
- 「ちがう ちがう。」
- 「ぜーんぜん ちがう。」
2ページ目
- 「君に会う時 あんまり 笑わない のって」
- 「私、君に 甘えてるん だよ?」
村木は自身の複雑な感情を他者に伝えようとするが、相手の理解は及ばない。彼女は自分が感じていることと外部から見られる印象が違うと繰り返し強調し、特に相手に会うときに笑わないことでさえ、自分なりの甘えの表現だと語る。このやりとりの中で、村木は自己の内面と外界とのズレに苦悩しながらも、そのギャップをどう乗り越えるかについて思索をめぐらせている。

