90年代末、僕は20代前半、
自分のサイトの中で「パパ」などと呼ばれていて、
どこにも未来がない未成年に、
「逃げていいよ」ではなく、逃げてくればいい、と言って
下宿に呼んでいた。
それだけでもう今ならアウトだが、
しかし「逃げていいよ」なんて口当たりのいいことを言って、
近くの児童相談所に通報して手続きを踏んでどうのこうの、
みたいなことをやっていては彼女たちは死ぬしかない。
だから僕は、逃げたいならここに逃げてくればいいと
具体的な回答を与えた。
それは決して僕の正義ではない。
「死にたいではなく消えたいのだ」という
不可解な彼女たちに関心があっただけだ。
この話はいつか長編として描きたいと思っているのだけれど、
相変わらずオチも展開もない上、
恋愛も青春もない、中身もない。
だがその後の僕の考え方に大きな影響を与えたことは間違いない。
ヒカルが『死にたいんじゃない。消えたいだけ』と大人には理解されない心情を吐露している。1990年代末、彼女のような現実に絶望した未成年を温かく受け入れ下宿で保護していた男性は、自身を犯罪者かもしれないと自問する。青春も恋愛もない時代に生きる若者の切実な現状と、その闇を描いた物語である。
