この時車内でかけたジャズはビル・エヴァンスだった。
ナナさんから何の話を聞いたかは思い出せないが、それだけは憶えている。
さんざん僕を詩人だポエムだとからかう癖に
ナナさんの手紙もいつも湿ったポエムで。
手紙の宛先が田辺になってるから、
僕が21、ナナさんが23の時だろうと思う。
僕は一年中誰かを車に乗せ、タクシーの運転手みたいになっていた。
ナナさんとは趣味がよく合った。
趣味というより見えている世界がよく似ていた。
ナナさんの手紙にもそう書いてある。
時々は人の心に一歩踏み込む勇気が必要になる。
だけど踏み込んで白日の元に晒し、暴き、裸にすること、
それは俗悪だ。
そんなことで得意がっているうちは誰にも顧みられない。
誰だって自分の話をしたいのだ。
その話が始まるまでジャズでもかけて待っていればいい。
一日の終わり、ある場所での出来事を振り返っている様子が描かれている。店の前の大きなガラス越しに見える夕空や、そこで流れていたジャズが思い出として心に残っているようだ。それは感動的な瞬間で、涙が出そうになるほど心が動かされたことを示している。また、女性は「私、しゃべり過ぎた?」と問いかけ、相手は「いいえ」と答えている。この会話から、二人の関係は親密であり、女性は自分の振る舞いを気にしていることが伺える。
